近畿運輸局認証工場
普通・小型自動車分解整備事業
認可番号 奈第1534号
 
Porsche 997 GT3 R Spec Suspension kit Story@
  新規車輛のサスペンションの設計を行っていくには、ダンパー寸法などの基本データの設定が必要になります。もちろんこの寸法を決めるには、1G車高の想定・ダンパーストロークの設定・スプリングレートの設定・それらに合わせたダンパーの減衰力の設定と非常に多岐に渡る項目を設定していかなければなりません。
これらの項目設定の為には、動的アライメントや四輪の車重等の実測データを取っていく必要があります。
当社でサスペンションキットの設定・装着を行う際の作業の一部を御紹介させて頂きます





サスペンションの新規インストールの際に必ず考えなければならない事。それはバンプステアと呼ばれる「サスペンションを実際車輛に装着し、走行時にサスペンションアームが動いた時のアライメント変化」を把握しなければならないという事です。
例えばフロントショックが2cm沈み込んだ時に、フロントキャンバーとトーがどの様に変化するか?を把握しておかなければタイヤが最大限のグリップを発揮するスリップアングルの想定が出来なくなってしまうだけでなく、ロール量やストローク量を設定する際の車高、ストローク位置、初期アライメント値の設定が出来なくなってしまうのです。当社ではこのバンプステアの計測から始める事で、最適なスプリングレート、車高の初期設定、フルストローク時のアライメントの最大変化量の基準値を出しています

バンプステアを計測したのちに、最適なサスペンションセッティングにおいて必要不可欠になるデータが四輪コーナーウエイトと呼ばれるファクターになります。コーナーウエイトと言うのはタイヤ四輪にそれぞれ掛かる車重の事を呼びます。
多くの場合、車検証には前後重量は記載されていますが、各一輪に対する正確な数値はコーナーウエイトゲージにより測定しなければ測る事が出来ません。
コーナーウエイトゲージによる測定から導き出される数値はもちろんバネ下重量も含めた重量となりますので、タイヤ・ホイール・サスペンションアーム・ナックル等のバネ下構成パーツの重量を加味した数値が実際のサスペンションに掛かる重量と言う事になります。
四輪荷重を図る事で、前後・左右・対角のコーナーウエイトのバランスを見る事が出来ます。



 



コーナーウエイトゲージを利用して、バネ上重量の想定を行うだけでなく、実際のタイヤに掛かる重量、つまりホイールレートを測る事が出来ます。このホイールレートとサスペンションに装着されているスプリングのレート及び、重量が掛かった際のショックの沈み込み量(ショックストローク)との関係からより正確なサスペンションアームのレバー比を計算する事も出来ます。
このレバー比を計測する事で、コーナーリング時やブレーキング時におけるショックアブソーバーの沈み込みの量からタイヤ位置での沈み込み量(つまるところのタイヤストローク量)を計算する事が出来ます。このタイヤストローク量が計算出来れば、最大ストローク位置における先程のバンプステアアライメントの数値を計算する事が出来るのです。

コーナーウエイトの計測により、バンプステア時のアライメント数値を決定する事が出来るのですが、サスペンションと言うのは無限に可動域を持っているのではなく、サスペンションアームにより決定された最大可動域が設定されています。
ショックアブソーバーのストローク領域において最適なバンプストローク(縮側のストローク量)およびリバウンドストローク(伸側のストローク量)の開始位置(1G位置)を決定すると、1G(通常の停車状態)での車高が決まってしまいますが、ショックアブソーバ側だけで位置を決めてしまった車高の場合は重心、前後バランス、バンプステア等の要素を加味した場合に最適な位置にあるとは言えなくなってしまいます。その為、ショックアブソーバー自体の長さ(ショックの全長)とショックストローク位置を最初に想定した車高値から逆算して基準値を設定していくのです







これまでのバンプステア・コーナーウエイトから計測したデータと決定された暫定車高値から、サスペンションをどの程度動かして行くかを決定するのがスプリングレートであります
メインスプリングレートを決定するにはフルストローク時のストローク量とコーナーウエイト、そしてレバー比との関係からある程度正確な数値を導き出す事が出来ます
メインスプリングのレートが高い場合は、1Gでのリバウンドストロークが取れない為、テンダースプリングや、ヘルパースプリングを組み合わせることで二次レートを作りリバウンドストロークを確保します。ヘルパースプリングを組み合わせる場合はダンパーの伸び側減衰力の過度な出力を抑える事が出来ると言うメリットもありますが、メインスプリングのみよりもより緻密なダンパーセッティングが必要になります。

スプリングレートとは、メインスプリング・ヘルパー及びテンダースプリングの直接的なスプリングだけでなくバンプラバーも含めた可変レート(バリアブルレート)が存在しますが、マルチリンク式サスペンションを採用している996.997の場合はサスペンションアームの支持部分であるブッシュにも非常に大きなフリクションが発生します。
このアームのフリクションと言うのは超高速で動くサスペンションにとっては非常に大きな負荷となり、スプリングやダンパーの動きに多大な影響を与えます。つまりこのアームのフリクションもスプリングと同じねじれによる力、復元性が発生しますから、アームブッシュのフリクションを抜き、1G位置での締め直しの作業も必要不可欠です。当然1G状態ではこの作業をする事が困難ですので、ジャッキなどを利用し1G位置を作り出し作業を行います



これらの作業は、当社でサスペンションキットを、設計・装着するポルシェ・BMWのみならず入庫車輛全てに行う作業ではありますが、非常に緻密で繊細な作業の積み重ねだと言う事を御理解いただけますでしょうか?
サスペンションと言う機能パーツはこれらの地道な作業の積み重ねにおいて最大限のパフォーマンスを発揮するものと考えております。当社と同じベースダンパー・同じスプリングレートを使った車輛でも明確なタイムの差が表れるのはこれら当社のセッティング能力・ノウハウの差だと自負しております
 
 
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